ネットワークスペシャリスト2023午後Ⅰ問3-3-2

問題

 本文中の下線④について、C課長がボトルネックを懸念した接続の区間はどこか。図1中の(i)~(v)の記号で答えよ。また、本文中の下線⑤について、リンクアグリゲーションで接続することでボトルネックが解決するのはなぜか。30字以内で答えよ。

高速無線LANの導入に関する次の記述を読んで、設問に答えよ。

 A専門学校では新校舎ビルを建設中で、その新校舎ビルのLANシステムのRFPが公示された。

・1教室当たり50人分のノートPCを無線LANに接続し、4K UHDTV画質(1時間当たり7.2Gバイト)の動画を同時に再生できること。なお、動画コンテンツはA専門学校が保有する計4台のサーバ(学年ごとに2台ずつ)で提供し、A専門学校がサーバの保守を行っている。

 A専門学校のRFP公示を受けて、システムインテグレータX社のC課長はB主任に提案書の作成を指示した。

〔LAN システムの構成〕

 次にB 主任は、新校舎ビルの LAN システムの提案構成を作成した。新校舎ビルの
LAN システム提案構成を図1に示す。

 次は、C課長とB主任がレビューを行った際の会話である。

C課長:基幹部分の構成についても説明してください。

B主任:まず、基幹部分及び高負荷が見込まれる部分は10GbEリンクを複数本接続します。そして、レイヤー2ではスパニングツリーを設定してループを回避し、レイヤー3では基幹L3SWをVRRP (Virtual Router Redundancy Protocol)で冗長化する構成にしました。

C課長:④スパニングツリーとVRRPでは、高負荷時に10GbEリンクがボトルネックになる可能性がありますし、トラフィックを平準化するには設計が複雑になりませんか。

B主任:おっしゃるとおりですので、もう一つの案も考えました。基幹L3SWとサーバL2SWはそれぞれ2台を接続して論理的に1台とし、⑤サーバ、FW(ファイアウォール)、WLC及びフロアL2SWを含む全てのリンクを、スイッチをまたいだリンクアグリゲーションで接続する構成です。

C課長:分かりました。この案の方が良いと思います。ほかの部分も説明してください。

2023年度(令和5年度)春期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰより引用・改変

↓↓答え↓↓

答え
 区間(下線④): (ii)
 理由(下線⑤): 平常時にリンク本数分の帯域を同時に利用できるから

解説

・区間(下線④)について

 スパニングツリーとVRRPを構成した場合にボトルネックが生じることについての知識を問う問題です。

・スパニングツリーとは

 スパニングツリーとは、ネットワークのループ構成を防止するためのプロトコルです。ネットワーク機器(スイッチ)が複数経路で接続された際、データが無限に循環する「ループ」が発生する可能性があります。スパニングツリーは、このループを自動的に検出し、不要な経路を遮断することで、データの循環を防ぎます。

 一方で、複数経路をあらかじめ用意して冗長性を確保しておくことは、ネットワークの可用性を担保する上で重要です。スパニングツリーでは、主要な経路に障害が発生した場合に、自動的に予備の経路へ切り替えることができ、ネットワークの可用性を高めることができます。

・VRRPとは

 VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)とは、ネットワーク機器(主にルーター)の冗長化を実現するためのプロトコルです。

 ネットワーク内の機器が外部ネットワークと通信する際、デフォルトゲートウェイとなるルーターを経由します。VRRPは、複数のルーターをグループ化し、仮想的な1つのデフォルトゲートウェイとして機能させます。

 VRRPグループ内のルーターは、マスターとバックアップの役割を持ちます。通常時はマスターが通信を処理し、マスターに障害が発生した場合、バックアップが自動的にマスターの役割を引き継ぎます。

・各エリアの通信量を求める

 今回、VRRPを構成しているので、基幹L3SW1、基幹L3SW2のいずれかがマスターとなることが想定されます。以下では、仮に基幹L3SW1がマスターとなった場合について検討します。

 基幹L3SW1がマスターとなった場合、基幹L3SW1と接続している経路が主系として使われることにあります。基幹L3SW2とつながっている経路はバックアップとなり、通常は通信しません。

 RFPにある、生徒が同時に動画にアクセスした場合に大きな通信帯域が必要になります。この通信を最大通信量として検討されているため、各経路において、この通信がどのくらいの帯域を消費するのかを確認します。

 動画視聴時の通信経路は、フロアL2SW(1F~5F)→基幹L3SW1→サーバL2SW1→動画コンテンツサーバーという経路になります。それぞれの経路で必要になる通信帯域について検討します。

(iii) フロアL2SW(1F~5F)⇔基幹L3SW1

 RFPにある、「1教室当たり50人分のノートPCを無線LANに接続し、4K UHDTV画質(1時間当たり7.2Gバイト)の動画を同時に再生できること。」から計算すると、AP⇔フロアL2SWの1回線当たりに必要な帯域は800 Mbpsとなります。※問3-3-1:問3の設問3の(1)に出題されています。

 7.2 × 8 × 1000 × 50 / 3600 = 800 (Mbps)

 階ごとに教室が3つずつあるので、フロアL2SW⇔基幹L3SW1ごとの通信量は、その3倍の、2.4 Gbpsとなります。

(ii) 基幹L3SW1⇔サーバL2SW1

 1フロアごとの通信量が2.4 Gbpsで、それが5階分ありますので、12 Gbpsが最大通信量になります。

(iv) サーバL2SW1⇔動画コンテンツサーバ

 RFPに「動画コンテンツはA専門学校が保有する計4台のサーバ(学年ごとに2台ずつ)で提供」とあるため、12 Gbpsが4台に分散され、3 Gbpsが最大通信量になります。

・ボトルネックとなるエリアを確認する

 本文中より、「基幹部分及び高負荷が見込まれる部分は10GbEリンクを複数本接続します。」とあります。10GbEリンクの最大通信可能量は、理論上 10Gbpsです。ここまでの試算により、(ii)の経路では、12 Gbpsが最大通信量となり、ボトルネックとなる可能性があります。

 よって解答は、「(ii)」となります。

・理由(下線⑤)について

・リンクアグリゲーションとは

 リンクアグリゲーション(Link Aggregation)とは、複数の物理的なネットワーク回線(リンク)を束ねて、1つの論理的な回線として扱う技術です。

 複数の回線を束ねることで、通信帯域を拡大し、より高速なデータ通信を実現します。例えば、1Gbpsの回線を4本束ねれば、理論上は4Gbpsの通信が可能になります。

 また、束ねた回線のうち、いずれかの回線に障害が発生しても、残りの回線で通信を継続できます。これにより、ネットワークの冗長性を高め、信頼性を向上させることができます。

・VRRPからリンクアグリゲーションに変えることでどうなるか

 すなわち、スパニングツリーとVRRPで構成していた場合は、1本の回線しか使えなかったものが、リンクアグリゲーションを採用することにより2本の回線を両方使えるようになります。

 スパニングツリーとVRRPで構成した際に、12 Gbpsでボトルネックとなっていた(ii)のエリアでも、リンクアグリゲーションでは2本の回線に分散し、1回線あたり 6 Gbpsでの通信となります。これにより、ボトルネックが解消されることになります。

 以上より、解答は、「平常時にリンク本数分の帯域を同時に利用できるから」です。

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